大好きな日本へ ふるさとへの手紙
The Japanese Version of "Dear Japan. A Letter to My Home"
大好きな日本へふるさとへの手紙
Dear Japan
まず何よりも私が伝えたいことは、私はあなたが大好きだ。私はあなたの地で産声をあげた。その時、私の肺はあなたの空気で満たされた。そして、あなたは私のふるさとになった。初めての涙も日本の病院で流した。そして、産声は廊下まで響き渡り、笑いと悲しみが交差する人生が始まった。
たった一つの私のふるさと。
春には、物心がついたときから毎年欠かさずに舞い散る桜の花びらをひろった。夏には、花火に心躍らせ、火花でできた指や腕の火傷さえも気にしなかった。プールサイドでのラジオ体操にももちろん行った。秋には、妹たちと一緒に海のように積もった赤い落ち葉に埋もれて遊んだ。そして冬が来る頃には、みんなでガスストーブの前に集まり、暖を取った。近づきすぎて足がチリチリ。それでも私の頰は冷たいままだった。
愛おしい、私のふるさと、日本。今の私がいるのはあなたのおかげ。
晴れの日も雨の日も風の日も、私の気持ちは変わらない。1995年、家族とテーブルの下で耐え凌いだ阪神淡路大震災。怒り狂う台風と猛暑の日々は私を家に籠らせた。けれど、神々が住んでいる山々を歩き、清らかな川や湖で泳いだこともある。そしてふるさとの静かな森の中で、ヘルマンヘッセのシッダールタを読んだ。
唯一無二の私のふるさと、日本。でも、あなたは私を受け入れない。
小さい頃から、私は当然のように自分が日本人だと周りに話した。でもみんな嘘だと笑った。なぜなら私の外見がみんなと違ったから。それは何年経っても、大人になっても変わらなかった。友達と遊ぶ時、学校、飲み会など、どこへ行ってもあの笑い声がいつも私を追いかけてくる。
昨日もそう。私がレストランで並んでいた時、そこにいた男性は「出身は?どこから来たの?」と、よくある質問をした。私は「あなたと同じ街です」と答えた。するとあの笑い声と共に「アメリカ人って面白いよね」と言われた。なにか笑われることを言ったのか、心の中の幼い私は不思議に思い、顔が赤くなった。
仕事も例外ではない。「先方はやっぱり日本人の方がウケが良いと思うんですよね。」
就職活動中にはこの言葉を何度も耳にした。
ねぇ聞いて。私は外見も話し方もここにいるほとんどの日本人とは同じじゃないかもしれない。両親がここで生まれたわけでもない。私には日本人の血が流れていない。
でも、知っていてほしい。どれだけあなたを愛することが時に苦しいかを。私の生い立ちを話すと「アメリカンジョーク」だとみんなが笑う。私は辟易とする。これは、ジョークじゃない。
時々電車の中で年配の男性がこの金髪をじっと見つめるときがある。そして手に持つ卑猥な雑誌に目を戻す。私が隣に座っていようとお構いなし。6歳から今に至るまで、それは続いた。これは、ジョークじゃない。
「おい。パッキンの姉ちゃん。君いくら?」
夜の帰路、酔っ払いたちが嘲笑いながら聞いてくる。
これは、ジョークじゃない。
子供の頃、なぜ周りからじっと見られているのか、私はわからなかった。私は気づいているのに、何故彼らは黙って私の写真を勝手に撮っているのだろう。ねえ、私はここ。ここにいる。私はあなたを見ているよ。
私は辛くなる。私がなぜ日本人ではないのかという理由を聞かされ、反論しなければならないとき。私のふるさとがどこなのかを勝手に決められたとき。会話のたびに「わかる?わかる?」って、私がちゃんと理解しているか尋ねられたとき。
こんな質問もよくされる。
「日本は好きですか?」-「はい、もちろん。」
「納豆は食べられますか?」-「はい、もちろん。」
「お箸は使えますか?」-「はい、もちろん。」
一番心が痛むのは、彼らが私の生い立ちを知っているのに外国人扱いをする時。私がどこで生まれたかを知っているのに、「外国人の視点から見た日本だ」という理由で彼らは私の作品に興味を持った。でも、聞いて。私はずっと日本で生きてきた。同い年のあなたの娘と同じように。私は外国に住んだことすらない。
大人になってもまだ、日本国籍を持っていないことに対してモヤモヤする気持ちを隠せずにいる。この国で生まれ育った事実は、周りの人達となんら変わりないのに。みんながこの国を気にかけるように私もこの国を大切に思っているし、その想いは時に誰よりも強い。みんなにわかってもらえるように、私は声を上げなければいけない。ここが私のふるさとであると信じてもらえるように、前を向き続けなければいけない。
Dear Japan, 私があなたのことを想うようにいつか私を受け入れてくれるかな。でも、心の奥では分かっている。報われないかもしれないと。この文化の狭間で生きる魂と体は、みんなと少し違っているから。でもいつか、大きな腕で受け止めてくれるなら、私はあなたの娘になりたい。
*この文章はもともと数年前に英語で発表したもので、親しい友人たちの意見や助言を受けながら日本語で書き直しました。
日本語版として公開するのはこれが初めてです。
この形で日本語版を出すことは、ずっと願っていたことでした。
最後まで読んでくださってありがとうございます。皆さまの優しさとご理解に、心から感謝しています。
English Version below.
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